男女共同参画WEBマガジン

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インタビュー2021

この人に聞く!

 

谷口 千津子 さん

やぐち

ちづこ

ふじのくに女性医師支援センター 専任医師

浜松医科大学附属病院 女性医師支援センター  特任講師

女性の復職

~ふじのくに女性医師支援センターの取組~

 近年、ワーク・ライフ・バランスの実践を掲げる企業が増え、男女共に「家庭と仕事の両立」について考える機会が多くなりました。しかし、出産・育休等から復職した後の生活プランに頭を悩ませる女性はいまだ多いのが現状です。

 ふじのくに女性医師支援センター及び浜松医科大学附属女性医師支援センターでは、学内や県内で働く女性医師の復職支援を行っています。ふじのくに女性医師支援センターの専任医師である谷口千津子さんに、その取組について伺いました。

 

 

 

 

 

センターの支援内容

 ふじのくに女性医師支援センターは、平成29年から県の委託を受けて、医局や大学の所属にかかわらず、女性医師の復職支援を行うことを目的に浜松医大の中に開設されました。

 医師に限らずですが、結婚や出産といったライフイベントが重なる時期に仕事の中でもキャリアを積んでいかなければいけない、そういう若手医師が大学病院をはじめとして県内の病院にはたくさんいらっしゃいます。

 仕事と家庭の両立が難しいと感じると現場から離れ、キャリア形成をあきらめてしまう女性医師もいる中、仕事と家庭の両立をお手伝いするために産休・育休明けの人や、夫の転勤で県外から転居してきた人などに復職・就業支援を行い、現在、子育て真っ最中で悩むことが多い皆さんに対して子育てやキャリアの相談、講演会等の啓発活動や働き方の提案といった活動を行っています。

 静岡県は東西に長い県ですので遠い地域でも当センターと連携できるように、県内医療機関を東部から西部まで順次訪問をさせていただき、情報共有ができるよう支援担当者を置いてもらっています。情報をいただいた際、その施設の女性医師の支援に対応するようにしています。

 特に10年目以下の若手の医師が多く所属している浜松医大の中では出産後の女性医師の支援について、所属している診療科等の理解が必要となってきます。本来、大学病院の勤務形態は、所属する診療科等のルールに従うことになります。しかし出産後その全てのルールに応えられず、キャリア形成をあきらめ退職する場合もあるため当センターでは常勤への準備期間として、新たな採用枠「女性支援センター所属の医員・非常勤医師」を設けました。仕事自体はもともとの自身の専門科ですが、女性医師支援センター所属となることで、就業する前に自分に可能な働き方を診療科の先生と当センターで確認をして就業時間、業務内容を決定しますので自分のペースで就業時間を設定でき、研修を継続することができます。

 

 相談は現在、対面や電話、メールで受けており、相談件数の実績は年々上がってきています。一番多い相談は「子どもが保育園・学童保育に入るのが難しい」ということ。近頃は院内保育施設ができつつありますが、地域の保育園を希望する人は多いです。また小学校に入ると更にお子さんの預け先に苦労する話をよく聞きます。当センターは、浜松市のファミリーサポートセンターの運営を担っている“認定NPO法人はままつ子育てネットワークぴっぴ”の協力を得て、情報提供や手続き支援を行っています。

 女性医師に限らない話ですが「どういうかたちで仕事と家庭が両立できるか」は誰も教えてくれません。私たちは相談を受けた時、御自身がどのような希望があるのかを伺った上で様々な働き方の提示や具体的に現在両立している先輩医師と話をする機会を提供したりしています。キャリア形成の相談にはその診療科の専門的な情報も必要になってきますので大学内の各診療科と連携し、どのような勤務をしていけばよいかなど働き方の具体的な相談もしています。

 

上司や夫も悩んでいる

 女性医師を指導する立場の先生から「どこまで仕事をしてもらえばいいのか」と相談を受けることがあります。指導する先生も女性の働き方に関心を持つ人が増えましたが、具体的にどういう配慮をすればよいか、わからないところがあるようです。また女性医師は、自身の復帰について子育てと仕事のバランスについてどこまで要望してよいかが分からない中、指導する先生に復帰について直接話をすることになり、不安に思いながら復帰準備をしなくてはなりません。特に医師は事務的な制度については上司も当事者も詳しくない方が多く、センターはそのような情報提供をしながら第三者的な立場で、女性医師の要望、上司の要望、双方から話を聞きスムーズな復帰のお手伝いをしています。その方がお互いに伝えたいことがはっきり伝えられ、復帰後の問題も起こりにくくなるのではないかと思っています。

 女性医師の夫からの相談も増えました。「自分も育休がとれないか」「妻と同じように自分も育児に関わりたい」と話す人もいます。「夫婦がお互いにどうやって仕事と家庭を両立するか」という復帰後のプランを夫婦で考える場面に、センターが立ち会ったりすることもあります。

 当大学では女性医師と話をしたいという女子学生もいるので、交流会を開催しています。ここには子育て中の男性医師も参加して夫の立場から、上司の立場からもざっくばらんに話をします。学生には自分たちの未来を見てほしいですね。男子学生にも自分のパートナーがどのようなことで悩むのか、自分の立場で考えてもらえるよう参加してもらえるよう働きかけをしています。

 

 

新型コロナウイルス感染症の影響

 この一年でオンライン形式のイベントが広く世間に浸透しました。今までは対面のみで実施していた講演会やシンポジウムを、今年は対面とオンラインのハイブリット形式で開催します。オンラインのおかげで遠方からの参加者もいます。子どもを見ながら自宅から参加できる気楽さがいいのかもしれません。

 また、医師は学会に参加することでキャリアを積むという側面があります。育児中の学会参加は難しいですが、去年はオンラインのおかげで学会参加が増えたという人が多くいました。このメリットは今後も活かしていきたいです。

 

 

一人ではなく、みんなで

 男女共同参画の意識は、男女問わず広がってきていると感じます。「女性もやみくもに働け」というよりは、「どんなかたちでもいいから復職できるように周囲が協力する」という風になってきています。ただ、その分負担のかかるサポート役の先生が疲れてしまうので、お互い無理せず、グループチーム制を作るのが理想かなと思います。

 一般企業も同じだと思いますが、産休・育休後に復職する時、常勤が「1」だとして、その「1」働くことは難しいです。0.7でも0.5でもいいから現場に戻れる道をつくっていきたいです。

 

 

ふじのくに女性医師支援センター ホームページ(外部リンク)

浜松医科大学女性医師支援センター ホームページ(外部リンク)

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★詳しくは浜松医科大学女性医師支援センター ホームページを御覧ください(外部リンク)

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