男女共同参画WEBマガジン

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自分らしく生きるためのヒントを見つける旅にでよう

インタビュー2018-2019

この人に聞く!

木村 幸男さん

(メンズサポート・静岡共同代表)

「男だって悩んでる」

男性相談からみえてくること

 10年ほど男性電話相談に携わっています。相談内容は多岐にわたりますが、多いのは、夫婦・パートナー関係でしょうか。例えば、妻が離婚したがっている、または、すでに子どもを連れて家を出てしまい、これからどうしたらいいか困っている。

 

 そこには自分自身の反省や自己批判はなく、「なぜこのような仕打ちをうけてしまうのか」という被害者意識が目立ちます。そして話を聞いていくと、そこからはジェンダー意識に関わる複雑な問題が透けてみえてくるのです。

 

 男はこうあるべきだ、女はこうあるべきだという、間違った伝統的な規範を、無自覚に引きずっているために、夫婦の人間関係などのトラブルの原因を、客観的に冷静に受け止められなくなっている男性が、なんと多いことか。

 

 ジェンダー意識は、その人の生育環境から派生した体験が複雑に絡み合って、後日になってから、たとえば夫婦関係の悪化といった形で、表面化する事例がほとんどです。つまり、いまだに根深く残る封建的な生活文化の規範が、民主主義教育を排除するかのように、世代を問わず男性の精神的葛藤をつくり出してる・・・逆に言えば、こうした誤ったジェンダー意識を改善していくことなしに、男性たちを苦しみから解放していくことは、不可能かもしれません。

 

自分や他人のいのちを粗末にしないで!

 相談に関わっていて考えさせられるのは、ひとりの人間の生活歴が、その人の現在の生活とその課題解決に、いかに大きく影響しているかということ。私たちの生き方・考え方や人間形成は、育っていく家庭・教育環境から、じつに大きな影響をうけます。自分や他人の生き方・考え方を大切にする習慣が身についていないと、他者や自分自身に対する配慮が欠け、生き方や行動が粗野になり、不誠実で雑な人間関係しかつくれなくなりやすい。自分のいのちを大切にできない人は、他人のいのちも大切にはできないでしょう。

 

 電話相談というものは、そうしたことに気づいて主体的に問題を解決できる力を身につけていくための、共同作業ではないかと思っています。

 

 そのために相談員には、さまざまな人間を理解できる対話能力が求められるはず。俗に言う男性問題とは、共生のパートナーである女性たちと深い関連をもつだけでなく、社会が抱えるさまざまな人権問題に通底しているはずです。ということから、相談員に不可欠な資質は、国際的にも通用する幅広い人権意識ではないかと思っています。

 

 

ブックサポーター 男だって悩んでる

あざれあ図書室

『とまどう男たち:生き方編』

(伊藤公雄、山中浩司∥編

   大阪大学出版会 2016年)

男性の自殺率は増え、若いうちから寄る辺のない男子が増えた今、男性自身がより生きやすい社会を作っていくことを求められる時代が始まろうとしています。変化にとまどいながらも、「男らしさ」という古い価値観から脱皮するために何ができるのかを考える1冊です。

『男性は何をどう悩むのか:男性専用相談窓口から見る心理と支援』

(濱田智崇、『男』悩みのホットライン∥編 ミネルヴァ書房2018年)

男性たちが抱える男性ならではの「生きにくさ」。日本で初めて男性専用相談窓口を開設した著者が、現代に生きる男性特有の悩みを事例別に検討すると共に、具体的な支援を紹介します。「男もつらいと言ってもいいのだ」というメッセージが伝わってくる本です。

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