企業などの組織の中でハラスメントの問題が話題になると、管理職の立場にいる社員や年配の男性社員たちが、「何がハラスメントにあたるかわからない」と言って困惑したり、「昔はそんなこと言われなかった」とあからさまに不満を言い募ったり、「訴えられないように部下や女性社員とは必要以上に関わらない」という極端な発想を抱いたりすることが少なくない。もちろん自分が「ハラスメントをするかもしれない」という意識を持つことは予防の面から重要だけれど、その意識が過剰に高まると、組織の構成メンバーにストレスフルな緊張感が生まれたり、メンバーの間で分断が起きてしまいかねない。
重要なのは、自分の立場をどこに置くかということである。上記のような困惑や不満を抱える社員の多くは、ハラスメントの問題には「加害者」と「被害者」しかいないと考え、そして自分が「被害者」よりも「加害者」になる可能性のほうが高いと考えている。そうして、ハラスメントの問題にはできるだけ触れない、関わらないという選択が取られることになってしまうのだ。
しかし、ハラスメントを受ける可能性は誰にでもあるし、身近な人や自分も受けるかもしれない。そうしたら仕事どころではなくなってしまう。傍観しているだけでは、組織はいつか自分にとっても働きにくく、いづらい場所になるだろう。私たちはどこかで自分の立場を変えて、「訴えられる加害者」ではなく「組織の心理的安全性を高める一員」としての役割を担っていく必要がある。それがひいては自分のためにもなるからだ。
組織の心理的安全性を高めるための実践として、近年バイスタンダー(第三者)介入というアプローチが話題になっている。ハラスメントやいじめは、権力を持つ人から持たない人になされることがほとんどであり、被害を受けた人は言い返したり逃げたりすることが難しい。だからこそ、側で見ている第三者が行動を起こすことが、非常に大きな意味を持つ。ではどんな介入方法があるのだろうか。一つずつ見ていこう。
①気を逸らす:加害者に対峙することだけが介入方法ではない。コーヒーカップを落としたり、話題を無理に変えたりしてハラスメントをストップさせる。「〇〇さん、ちょっと相談があるんだけど」と言って被害を受けている人を別の場所に連れていくのもいいかもしれない。
②助けを求める:自分では介入できない場合、学校の先生や職場の上司などを呼んできて注意してもらう。飲食店などでハラスメントを見かけた時は店員に協力を求め、注意してもらうということも可能だ。
③記録する:レコーダーで録音したり、カメラで撮影したり、メモに書き記したりしてハラスメントの記録を残す。データは被害者に渡して使い方は委ねる。どこかへ相談しにいく時、それは被害者の大きな助けになる。
④後でフォローする:ハラスメントが起こっている最中は何もできなかったとしても、終わった後「大丈夫でしたか?」「何か手伝えることはありますか?」と声をかける。もし誰も何も言わなければ被害者は自分には誰も味方がいないと思うだろう。少しの声かけが被害者の大きなエンパワメントになる。
⑤直接指摘する:最もハードルの高い介入方法。加害者が上司などの目上の人だった場合は余計に難しいかもしれない。しかし、言い方の工夫次第で指摘しやすくなるかもしれない。「それハラスメントですよ」という直接的なものだけでなく、「あなたがそういうと悲しくなります」、「あなたのような人がそんなこと言うなんて…」などバリエーションはたくさんある。
対抗手段を知らなければ、私たちはハラスメントの前に立ち尽くすしかなくなる。しかし、意外とできることは多いのだ。ハラスメントをしたと訴えられるかもしれない…と怯えているだけでは、結局のところ組織は改善されないし、むしろ悪化しかねない。どうすればハラスメントそのものを減らしていくことができるのかについて考えることが、その困惑から抜け出すための契機になる。
ただ、上記の介入方法をすぐに一人で実践するのは難しいかもしれない。突然の出来事に身体はすぐには反応しないからだ。できれば、同じ問題意識を持つ仲間を見つけて、普段から介入のアイデアを話し合ったり介入行動の練習をしておくといいかもしれない。そうして私たちは怯える傍観者から、組織をよりよくする積極的な第三者へと変化していくことができる。
重要なのは、自分の立場をどこに置くかということである。上記のような困惑や不満を抱える社員の多くは、ハラスメントの問題には「加害者」と「被害者」しかいないと考え、そして自分が「被害者」よりも「加害者」になる可能性のほうが高いと考えている。そうして、ハラスメントの問題にはできるだけ触れない、関わらないという選択が取られることになってしまうのだ。
しかし、ハラスメントを受ける可能性は誰にでもあるし、身近な人や自分も受けるかもしれない。そうしたら仕事どころではなくなってしまう。傍観しているだけでは、組織はいつか自分にとっても働きにくく、いづらい場所になるだろう。私たちはどこかで自分の立場を変えて、「訴えられる加害者」ではなく「組織の心理的安全性を高める一員」としての役割を担っていく必要がある。それがひいては自分のためにもなるからだ。
組織の心理的安全性を高めるための実践として、近年バイスタンダー(第三者)介入というアプローチが話題になっている。ハラスメントやいじめは、権力を持つ人から持たない人になされることがほとんどであり、被害を受けた人は言い返したり逃げたりすることが難しい。だからこそ、側で見ている第三者が行動を起こすことが、非常に大きな意味を持つ。ではどんな介入方法があるのだろうか。一つずつ見ていこう。
①気を逸らす:加害者に対峙することだけが介入方法ではない。コーヒーカップを落としたり、話題を無理に変えたりしてハラスメントをストップさせる。「〇〇さん、ちょっと相談があるんだけど」と言って被害を受けている人を別の場所に連れていくのもいいかもしれない。
②助けを求める:自分では介入できない場合、学校の先生や職場の上司などを呼んできて注意してもらう。飲食店などでハラスメントを見かけた時は店員に協力を求め、注意してもらうということも可能だ。
③記録する:レコーダーで録音したり、カメラで撮影したり、メモに書き記したりしてハラスメントの記録を残す。データは被害者に渡して使い方は委ねる。どこかへ相談しにいく時、それは被害者の大きな助けになる。
④後でフォローする:ハラスメントが起こっている最中は何もできなかったとしても、終わった後「大丈夫でしたか?」「何か手伝えることはありますか?」と声をかける。もし誰も何も言わなければ被害者は自分には誰も味方がいないと思うだろう。少しの声かけが被害者の大きなエンパワメントになる。
⑤直接指摘する:最もハードルの高い介入方法。加害者が上司などの目上の人だった場合は余計に難しいかもしれない。しかし、言い方の工夫次第で指摘しやすくなるかもしれない。「それハラスメントですよ」という直接的なものだけでなく、「あなたがそういうと悲しくなります」、「あなたのような人がそんなこと言うなんて…」などバリエーションはたくさんある。
対抗手段を知らなければ、私たちはハラスメントの前に立ち尽くすしかなくなる。しかし、意外とできることは多いのだ。ハラスメントをしたと訴えられるかもしれない…と怯えているだけでは、結局のところ組織は改善されないし、むしろ悪化しかねない。どうすればハラスメントそのものを減らしていくことができるのかについて考えることが、その困惑から抜け出すための契機になる。
ただ、上記の介入方法をすぐに一人で実践するのは難しいかもしれない。突然の出来事に身体はすぐには反応しないからだ。できれば、同じ問題意識を持つ仲間を見つけて、普段から介入のアイデアを話し合ったり介入行動の練習をしておくといいかもしれない。そうして私たちは怯える傍観者から、組織をよりよくする積極的な第三者へと変化していくことができる。