男女共同参画WEBマガジン

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インタビュー2017

この人に聞く!

小野 美智代さん

(公益財団法人ジョイセフ・HiPs

「結婚と姓」

夫婦別姓を選択する

 夫と娘2人の4人家族です。夫とは長男長女の結婚だったので、両家の親族と友人を招待し挙式と披露宴を盛大に挙げましたが、法律上、夫婦ではありません。つまり法律婚ではなく「事実婚」です。法律婚をしない理由は、現在の日本の民法では夫婦別姓を選べないからです。市役所で結婚届は受理されませんでした。もし、夫婦別姓を選択することが日本の法律で認められていれば、法律婚をしていると思います。

 

 そもそも私が自分の姓にこだわるのは、旧家の姉妹の長女として生まれ、「婿を取れ」という祖父からの圧力が幼い頃からあったという理由が一つにあります。そして、夫が自営業を継ぐ長男ということもあり、結局、「姓は変えない方が両家にとって良い」とそれぞれの家のことを考えて、別姓を貫くための事実婚をすることに決めました。

 

 夫婦別姓であることに、今、まったく問題を感じていません。別姓は私と夫の考え方、生き方に即していて、我が家は、戸籍が別の世帯主が2人いる状態です。私は配偶者として夫に属するのではなく自立したひとりの人間として、生活のさまざまな側面で物事に対峙する際に自己判断ができ、諸々の物事が非常にスムーズにいくことがあります。「事実婚の別姓であることで、社会的に不利な立場に置かれたことがあるか」とよく問われますが、私は今まで経験したことがないのでよくわかりません。別姓であることは同姓であるよりも社会のいろいろな側面でメリットがあると感じています。むしろ、通称使用として旧姓を名乗る職場の同僚を見ていると、何かと面倒そうだなぁと気の毒に思います。

 

 娘2人は、私の姓を名乗っていますが、2人を妊娠中に夫が胎児認知をしたため、夫の戸籍にも娘たちの名前が記載されています。2013年には、嫡出子の相続に関する問題も解消されたため(民法の一部を改正する法律が成立し,嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました)、娘たちにとっても私たち夫婦が事実婚で別姓であることで特に不利なことはないと思っています。日常生活の中で、親の姓を聞かれることありませんしね(笑)。

 

日本の家制度と結婚、結婚の未来

 日本の民法では、夫婦は同姓しか選べません。そんな中96%の女性が夫の姓を名乗っています。私は、大学やその後の就職先でジェンダーを研究してきた中で、どうして日本では夫婦が同姓を強制されるのか、女性が当たり前のように夫の姓を名乗るのかということに疑問を持ってきました。それは、日本における結婚というものが家制度に深く根差し、女は夫の家に嫁に入り、家長である男の配偶者として属するという伝統が根強く残っているためです。夫婦別姓を選択できないのは、世界中どこ見ても日本だけなのです。

 

 2015年、夫婦別姓に関する訴訟がありました。憲法では男女平等を謳っているにもかかわらず、民法では夫婦別姓を選べないことが、違憲かあるいは違憲ではないかという争点でしたが、結局、“違憲ではない”という判決が最高裁で出ました。この判決は、そもそも男女平等という土壌があってのことなら納得できますが、ほとんどの女性があまり深く考えずに夫の姓を名乗っている現実からすると、矛盾を感じます。

 

 少子化が加速している日本ではいま、さまざまな政策が打ち出されていますが、産み育てるための環境を整備したり、婚活事業に投資する以前に、明治時代から続く古い民法、特に「家族法」と呼ばれるところを改正したらいいと思います。これだけ少子化で一人っ子カップルが増えている中で、姓をめぐる問題で結婚できない人たちが私の身近でも複数います。もし、法が改正されて夫婦別姓が選択できるようになれば、結婚のハードルが下がるのではないでしょうか。日本の結婚の未来は、もっと選択肢が増え、多様なライフスタイルが当たり前にある社会になってほしいと切に願います。

 

公益財団法人 ジョイセフ:https://www.joicfp.or.jp/jpn/

HiPs:http://hips-net.org/

 

 

 

 

 

 

 

ブックサポーター 結婚

あざれあ図書室

『結婚さえできればいいと

                      思っていたけど』

(水谷さるころ  幻冬舎  2016年)

結婚すれば幸せになれるのでしょうか。「30歳までに結婚したい!」と駆け込み三十路婚した著者。でも、実際の結婚生活は想像していたものと違っていて…。「結婚とは何か?」を考え続け、自分なりの答えを見つけるまでを描いたコミックエッセイです。

『結婚クライシス:中流転落不安』

(山田昌弘 東京書籍 2016年)

著者は日本の結婚難の現状「結婚クライシス」の背景には、「中流転落不安」があることを指摘します。また、その不安を象徴する現象として、「婚活」の実態を取り上げ、日本人の結婚に対する意識や社会のあり方を変える必要性を伝えます。

『結婚と家族のこれから:

                   共働き社会の限界』

(筒井淳也 光文社 2016年)

「共働き社会」に移りつつある今、結婚することや家族をもつことが難しい時代となっています。本書では、古代から現代までの結婚や家族について、家制度の歩みとともに辿り、結婚や家族の未来はどうなっていくかを考えます。

『非婚ですが、それが何か!?:

           結婚リスク時代を生きる』

(上野千鶴子、水無田気流

               ビジネス社 2015年)

現在、男女の結婚観が変わりゆくなかで「非婚化時代」を迎えています。団塊世代のおひとりさま・上野千鶴子さんと、団塊ジュニアで子育てに悪戦苦闘中の水無田気流さんが、経験とデータをつきあわせながら「結婚離れ」について語り合います。

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