男女共同参画WEBマガジン
epoca
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インタビュー2023
地元のハンサムウーマン ~地域力を高める女性たち~
大塚 佐枝美 さん
(静岡女性史研究会 代表/静岡市)
静岡で生きた女性たちの足跡をたどって
「この世界の片隅に」という映画がヒットした。「静岡女性史研究会」が発行している「しずおかの女たち」を読むと、静岡で戦中・戦後を生きた女性たちの人生を知る事ができる。内容は全て、会員が一人ひとりに話を聞き、書きまとめたものだ。会の代表でもあり、令和4年度男女共同参画社会づくりに関する知事褒賞を受賞した大塚佐枝美さんに話を伺った。
戦中から戦後へ、変わる女性の生き方
1942年生まれ。取材を通して大塚さんの人生は歴史そのものだと感じた。愛媛県出身の大塚さんは教師だった父の勧めで関西の大学に進学。大学に家政科の修士課程ができた年の第一期生として卒業後、四国に戻り、各地に設立され始めたばかりの短大で講師・助教授に就いた。「当時は女子も短大くらい出ておかなくちゃという雰囲気でした。でもその内容は『主婦養成の場』。男は外で働いて女は家で家事育児が当たり前の時代でしたから」
定員60人に対して180人が入学。授業数は3倍になり大変だったと言います。「結婚後、夫は静岡、私は四国で2年ほど別居していました。その後仕事を辞め、夫のいる静岡に来て子育てをしていましたが、子育てだけでは物足りなくて、水泳教室や文章教室、PTAなどの活動を始めました」
1996年、静岡県立静岡南高等学校の非常勤講師として再就職し、これまで女子だけが必修だった家庭科を男子にも教える「男女共修家庭科」を担当。さらに「城内カウンセリング研究会」を立ち上げ、不登校の子を持つ母親などの悩み相談や講座開催を始めたという大塚さん。NPO法人あざれあ交流会議では理事を務め、広報誌の編集や講座企画・運営などに携わる傍ら、「大学女性協会」「静岡女性史研究会」にも所属し活動の幅を広げていった。
女性史にかける想い
「女性の人生の方が面白い」と話す大塚さんが、特に興味を持って取材に取り組んできたのが戦争未亡人、大陸からの引揚者だと言う。「引揚者は短大で教鞭を執っていた時に同僚であった2人がとても魅力的でした。
そして未亡人は戦中教育の中で『女は未亡人になった時のために手に職をつけろ』と教えられてきたから」
そんな大塚さんは「やっぱり女性は経済力を持たないといけない」と強く言う。「私は仕事を持って収入があったから好きなことができた。そうでなかったら何をするにも夫にお伺いを立てなくてはならなかっただろう」と。
自分の子どもには戦争体験を話していないと言う大塚さんだが「自分の一生を書き残しておかないと」という思いもあるという。「教科書で学ぶ歴史は統治者に都合のいいように書かれたもの。一般の人が当時感じていた歴史とは違うかもしれない」
大塚さんは女性たちの個人史を聞き書きすることで、「少しでも世の中を変えられれば」と話す。時代は違えども彼女たちの人生は、戦争を知らない現代の若者にも共感できる部分が多い。「今後は国境を越えた女たち(日本に来ている外国人)の話を聞き書きしてみたい」
若者にも静岡の女性史を知ってほしいと8集まではWAN※のミニコミ図書館に電子化されている。現在は11集にむけて、夫婦別姓を特集にして調査に取り組んでいる。「短大で教師だった時代より今の方が楽しい」と語る大塚さんの女性史の研究は続く。
令和4年度男女共同参画社会づくりに関する知事褒賞
男女共同参画推進の部(個人)を受賞
“ママとね”スタッフの皆さん イベント時にて
『しずおかの女たち 第10集』
(静岡女性史研究会 羽衣出版 2019年)
1979年の第1集発行から40年、第10集の特集「私たちの現在を問う」では、筆者達が聞き書きを通じて自分自身の問いにも向き合います。女性たちが歩いてきたそれぞれの道に、時間を忘れて読みふけってしまいます。
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『地域女性史への道』
(折井美耶子 ドメス出版 2021年)
地域女性史の真骨頂は、名を遺した女性だけではなく、歴史の表舞台に現れない市井の祖母や母たちの歩みを残すこと。地域女性史研究の記録や貴重な資料の保存など、地域女性史の現状や課題をまとめた1冊です。
ブックサポーター 地域女性史を紡ぐ
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