男女共同参画WEBマガジン
epoca
自分らしく生きるためのヒントを見つける旅にでよう
インタビュー2017
この人に聞く!
落合 美恵子さん
(特定非営利活動法人御前崎災害支援ネットワーク代表理事)
「防災の未来」
行政に頼らない、自助と共助の防災力
この活動を始めたきっかけは2004年の新潟県中越地震です。当時ファイナンシャル・プランナーとして相談業務を始めていました。中越地震で疑問に思ったのは、災害が起きた時、住宅ローンの計画などの生活設計はどうなってしまうのだろうということです。そこで、お金に関する現地調査・取材をしようと、小千谷市や越路町、山古志村に入り、現地の対策本部や総合病院、商店街、仮設住宅などをまわりました。いろいろな人から話を聞き、状況を目の当たりにして感じたのは、お金の話しは二の次、三の次。まず生き残ることが最優先、命を繋がなければ生活設計の話もできないということ、災害の際は行政職員も被災者であり、行政に頼りすぎてはいけないということでした。
この中越地震の現場で経験したことを御前崎市民に伝えていきたいと、その後防災士や災害ボランティアコーディネーターの養成講座を受講し勉強しながら、徐々に仲間を募りつつ、2008年4月、正式に「御前崎災害支援ネットワーク」を立ち上げました。私たちの活動の目的は、いざという時行政に頼らず、自分で自分の命、家族の命を守るための自助努力と協働力を高めること、女性の防災リーダーを育成すること、女性や高齢者、障がい者に配慮した防災について啓発することです。
女性防災リーダーを育てたい
2011年の東日本大震災の後、県の地域防災活動推進員として2年間、各地の自主防災組織の調査をし、分かったのは、自主防災組織の役員に女性がほとんどいないということです。
1995年の阪神淡路大震災の時、災害時における女性特有のリスクに関心が集まり、東日本大震災でも問題になりました。被災し避難所生活を送る女性たちの中には、自身のからだの健康(生理、膀胱炎)や子育て、家族の介護、暴力(性暴力、DV)など困難な状況を抱えることになる人が多くいます。彼女たちは、避難所での困りごとに対して要望したり声を上げたりすることを我慢しがちだという実態があり、その背景には、避難所運営のほとんどが男性中心で行われ、女性特有の問題に配慮が行き届かないということがあるといえます。
この問題を何とかしよう、女性の防災リーダーを育成しようと講座を企画し、御前崎市で毎年「女性のための防災・減災リーダー養成講座」を実施して5年になります。養成講座受講者の中から、リーダーとして自主防災女性の会などで防災を担う人材が育ちだんだん活動が広まっています。
防災の未来に想いをはせる
これからは、学校教育の一環として防災について学ぶ機会をつくることが重要ではないでしょうか。防災訓練だけでなく授業科目のひとつとして防災教育を導入すべきだと思います。これだけ自然災害がある国で、子どもたちが小さい頃から災害の危険性や自分の命は自分で守ることを学習し、防災力を身につけていくことが次の世代へ防災意識を繋げていくことになります。
東日本大震災時の“釜石の奇跡”のように、「大きな地震が発生した時には、必ず津波が来るから自力で逃げろ」という教えが子どもたちに根付いていたからこそ繋ぐことができた命があるのです。そういった教育の中で、女性や高齢者、障がい者への配慮も学ぶことができれば、いざという時に生きてくるでしょう。
平時から危機意識を持ち、防災を他人ごとではなく、自分ごととして捉えること、行政が何もかも助けてくれるという幻想を捨てることが、あなた自身とあなたの家族の命と生活を繋ぐことになるのです。
特定非営利活動法人 御前崎災害支援ネットワーク:http://omaezaki-ds.net/
ブックサポーター 女性と防災
あざれあ図書室
『女性目線で徹底的に考えた
防災BOOK』
(マガジンハウス 2016年)
災害から自分や家族を守るために、何をどのくらい備えておけば安心でしょうか。本書では、女性の目線から、被災してわかった必要なモノ、被災時の様々な状況で冷静に行動するための知識などが紹介されています。
『福島のお母さん、聞かせて、
その小さな声を』
(棚沢明子 彩流社 2016年)
福島で被災したお母さん10人の体験を丁寧に聞き書きした一冊。「避難したのか、しなかったのか」「賠償金をもらえたのか、もらえなかったのか」それぞれの違いにより生まれる心の軋轢など、彼女たちを取り巻く現状や苦悩が伝わってきます。
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