男女共同参画WEBマガジン
epoca
自分らしく生きるためのヒントを見つける旅にでよう
インタビュー2019
この人に聞く!
後藤 理玖さん
(Rainbow Doorしずおか代表)
「トランスジェンダーの君へのメッセージ」
誰にでも開かれた居場所カフェ「カフェ・レインボー・ドア」
中学時代の3年間を不登校で過ごしました。中学1年生の時、性自認が生まれながらの性である女性ではなく、男性であることを自覚し、そのことを誰にも言えず苦しみました。学校では、女子のグループに入ることができず、いじめにあったり、担任の先生の性的マイノリティを笑いのネタにするような発言に傷つき、トランスジェンダーであることがバレないように隠して生活をしていました。当時は、家族にも隠し、必死に女の子を演じていました。どこにも自分の居場所がないと感じ、「自分はいったい何者なのか?」と自問自答していました。
3年前に「カフェ・レインボー・ドア」を立ち上げたのは、当時の自分が、地元でLGBT当事者同士が気軽に集まってリアルで正しい情報を共有でき、自分を隠さずにいられる居場所が欲しかったからです。このカフェは、LGBT当事者のみならず、誰にとっても自分らしくいることのできる居場所でありたいと思い立ち上げました。また、カフェの運営と共に、LGBT啓発活動として、小・中学校に呼んで頂き、教員などを対象に自分の経験を話をさせて頂いたり、メールで当事者からの相談を受付けたりしてきました。4月からはカフェではなく、居場所スペースとして、中高生もアクセスしやすい沼津駅の近くに移転する予定です。
トランスジェンダーの生徒をめぐる学校現場での課題
特に教育現場では、LGBTの生徒への理解と柔軟な対応が早急に求められていると実感しています。現在は、男女共にズボンかスカートどちらの制服も選択できる学校が出てきましたが、まだごく一部にすぎません。男女で区別された制服の規定があるために学校へ行けず、不登校になったり、中退せざるを得ない生徒もいます。トランスジェンダーの生徒が、カミングアウトの必要性や負担を感じずに、制服が選べる環境ができればいいなと思います。「冬は寒いからズボンで行こう」、「夏は暑いからスカートにしよう」など、男子でも女子でも自分のジェンダー・アイデンティティを気にせずに制服を選択できればいいですね。
トイレの問題も同じではないでしょうか。男女で限定されない、使用することでカミングアウトに繋がらない、誰もが使えるトイレが必要だと思います。集団生活にはルールが必要ですが、制服やトイレの問題など、二元化された性別によるルールの意味を問い直す必要があると思います。トランスジェンダーへの認知度は昨今上がってはきていますが、まだまだ越えなければいけないハードルはあるのではないでしょうか。
トランスジェンダーの君へ
不登校だった中学時代、なぜ私が学校に行かないのか誰にも打ち明けることが出来ませんでした。中学を転校した後も、学校に通うことはできませんでしたが、転校先の先生が毎日の様に家に来てくれ、じっくり自分と向き合おうとしてくれた事が嬉しくて。この先生になら打ち明けても大丈夫なのではないかと思うようになりました。その先生には卒業間近にカミングアウトしました。また同じ時期に通っていた塾の先生も私のことを応援してくれました。勉強はしたいのに、頑なに学校に行こうとしない私が、「スカート履きたくないから、学校に行きたくない」とポロッと言うと「だったら、ズボン履いて行けばいいじゃん!」とサラっと言葉を返してくれました。この先生の働きかけで、間接的に母にもカミングアウトすることができ、また男子生徒として高校に通うことができるようになりました。男子生徒として受け入れてくれ、様々な面でサポートしてくださった学校には本当に感謝しています。男子生徒として入学するにあたり、“リク”という通称名を使うことになりました。私はとても嬉しかったのを覚えています。その一方で、母が困惑した表情をしていたことを今でも忘れられません。当時、母は、私がトランスジェンダーであることに気づいていましたが、受け入れることを避けていた様に感じます。その後、時間はかかりましたが、今ではありのままの私を受け入れてくれ、リラックスした関係を築けています。母との関係を橋渡ししてくれた先生方には、本当に感謝しています。最近では、80歳を超える祖父も、”リカ”ではなく”リク”と呼んでくれたり、祖母も「がんばってるね」と、私のLGBT啓発活動に理解を示してくれています。
あなたがトランスジェンダーであるということには何の非もありません。もし今、苦しみや悩みを抱えているとしたら、それはあなた自身の性自認の捉え方が間違っているからではなく、周りにいる家族や学校の先生、友人などのあなたへの捉え方が、本来のあなた自身と違うからだということに気づいて欲しいのです。
家族へのカミングアウトは、身近で大切な存在だからこそハードルが高く、時間もかかると思います。また、やっとカミングアウトできても、すぐに受け入れてもらえるとは限りませんよね。私自身の経験から言えることは、「時間が解決してくれることもあるよ」ということ。私も、悩みの真っ只中にいる時期は、そこから抜け出すために何をしたらよいのかわからず、もがいていました。誰かに知って欲しくても誰にも言えず、頼れる情報もなく、自分はみんなと違うダメな人間だと思っていました。幸運なことに、安心して話せる先生にめぐり会い、「自分はこれでいいんだ」と徐々にアイデンティティを確立できるようになりました。まだ、精神的に不安定になる時もたまにありますが、周りを見渡せば、私のことを温かく見守り、応援してくれる人たちがいることに気づきます。あなたにも、そんな人がきっといるはずです。絶望する必要は全くありません。
Rainbow DooR:http://www.at-ml.jp/71931/
ブックサポーター トランスジェンダーの子どもたち
あざれあ図書室
『封じ込められた子ども、
その心を聴く:
性同一性障害の生徒に
向き合う』
(中塚幹也 ふくろう出版 2017年)
性同一性障害の子どもたちは、どのような気持ちや悩みを抱えているのでしょうか。学校に求められている役割や具体的な対応についても解説。性別に違和感を持っている子どもたちへの理解に役立ちます。
『パンツ・プロジェクト』
(キャット・クラーク
あすなろ書房 2017年)
中学校の始業式の朝をリブは最悪な気分で迎えます。なぜなら、制服のスカートをはかなくてはいけないから。リブは外見は女の子でも内面は男の子なのです。自分らしく過ごすために闘うリブを応援したくなります。
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