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 『人形の家』から考える〈女性と自由〉

演出:宮城聰

作:ヘンリック・イプセン                                                                         訳:毛利三彌

 

 

 ヘンリック・イプセンの戯曲『人形の家』が2023年2・3月にSPAC(静岡県舞台芸術センター〈Shizuoka Performing Arts Center〉※)の拠点、静岡芸術劇場(グランシップ内)で上演されます。

 

 今回は同公演にあわせ、SPAC芸術総監督で同公演演出の宮城聰(みやぎ・さとし)さんのコメントと共に『人形の家』を探訪します。

 

 

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-『人形の家』あらすじ-

 弁護士の夫ヘルメルと子どもたちと、何不自由なく幸せな生活を送るノーラ。しかし、かつて夫を助けるために秘密裏に行った借金が露呈。激情したヘルメルの発言により、自分が夫にとって都合のいい所有物であり、従順な「人形」に過ぎなかったと悟ったノーラは、「一人の人間として生きる」決意をし、家族を捨て、家を去るのだった。

 

 

-作品背景-

  『人形の家』は、「近代演劇の父」と言われるノルウェーの作家ヘンリック・イプセンが1879年に発表した戯曲です。世界で初めて「女性の自立」を文学で描いたと言われ、男性優位な当時の社会において、そのセンセーショナルな結末は激しい賛否の論争を巻き起こし、その後日本で起きた女性解放運動にも大きな影響を与えました。140年が経った今も国内外で絶えず上演され続けています。

 

 

-SPACでの上演にあたって-

 演出の宮城さんは今回、舞台設定を当時のヨーロッパから昭和10(1935)年の日本に大胆に置き換え、衣裳は和装、小道具は日本家具でしつらえます。一見レトロな時代に見せながら、現代の日本においても「女性の立場」が根本的には戦前から変わってはいないのでないか、それはなぜなのか、と観客に問いかけます。またこの設定は、それが決して過去のものではないことも示唆しています。

 

 また、巨大なパズルを模した舞台装置は物語の設定より時代幅を持たせ、それぞれのピースに “三種の神器”(洗濯機・冷蔵庫・テレビ)や自動車、ミシンなどの家庭用品が描かれています。ヘルメルとノーラ、そして今を生きる私たちも「“幸せな家庭”に必要なもの」にむしろ縛られているのではないか――物語が進むにつれてパズルのピースが徐々に欠落していく仕掛けは、観客の固定観念を足元から揺さぶり、本質を問うものです。

 

 

-SPAC芸術総監督 宮城 聰さんのコメント-

 世界で有名な戯曲、タイトルを5本くらいあげてくださいと言えば、きっと入るくらい有名な作品です。女性が自立するということを、文学として一番最初に書いた作品でもあります。『人形の家』というのは、一番最後にヒロインのノーラが、自分の亭主を棄てて「私はもうあなたの人形ではありません。私は私を教育するために家を出ます」と言って離婚をしてしまう。当時としては「え?そんなことしていいの?」というエンディングなんですね。実際イプセンの時代にも非難轟々で、このエンディングをイプセンは仕方なく書き直したくらいなんです。一旦出ていったノーラが「でもやっぱり家には子どももいるし、仕方がないから戻ってこようか」という第二バージョンのエンディングを書いたくらい、その頃はショッキングなエンディングだったんです。

 

 この「これは昔のことだよね。だって今女性は自立している」と言えそうな話を、今もう一度観てみると「あれ?あんまり変わってないんじゃない?」「じゃあ、何で?」そんなことをきっと考えていただけると思います。

 根本的には戦前の日本と変わっていないのではないか、そんなことも思って、今回の僕の演出では、昭和10(1935)年の日本を舞台に、日本の中流階級の夫婦の話に置き換えています。

 『人形の家』は、演技のスタイルも僕らにとって新しい挑戦です。ぜひご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演出家プロフィール

宮城 聰(みやぎ・さとし)

演出家。2007年SPAC芸術総監督に就任。自作の上演とともに世界各地から現代社会を鋭く切り取る作品を紹介、また県内各地でのアウトリーチ活動にも力を注ぎ「世界を見る窓」としての劇場運営を行う。代表作に『王女メデイア』『マハーバーラタ』『アンティゴネ』など。K-mixレギュラー番組「宮城聰の頭のなか」出演中。

 

 

◆公演情報◆

SPAC秋→春のシーズン2022-2023 #4

『人形の家』

演出:宮城聰

作:ヘンリック・イプセン

訳:毛利三彌

 

出演:

たきいみき・・・ノーラ(ヘルメルの妻)

加藤幸夫・・・弁護士クログスタ

武石守正・・・ドクトル・ランク

葉山陽代(鈴木陽代改メ)・・・リンデ夫人

bable(ベイブル)・・・弁護士ヘルメル

森山冬子・・・家事手伝いヘレーネ、ヘルメルの子ども

 

一般公演

2月11日(土祝)、12日(日)、19日(日)

3月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)

各日14:00開演

会場:静岡芸術劇場(グランシップ内)

 

上演時間:未定(120分以内)

日本語上演/英語字幕

 

 

★公演の詳細はこちら(外部リンク)

https://spac.or.jp/au2022-sp2023/dollhouse_2022

 

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※)SPAC-静岡県舞台芸術センター(Shizuoka Performing Arts Center):https://spac.or.jp/

©加藤孝

  静岡県が設立した公立劇団。グランシップ内の静岡芸術劇場と日本平にある舞台芸術公園を拠点に、多彩な舞台芸術作品の創造・上演とともに国際演劇祭「ふじのくに⇄せかい演劇祭」の開催、海外公演、中高生鑑賞事業や人材育成事業、県内各地でのアウトリーチなど様々な活動に取り組んでいます。

あざれあ図書室

あざれあ×SPAC

『人形の家』から考える〈女性と自由〉@展示コーナー

今月の展示コーナーのテーマは『人形の家』から考える〈女性と自由〉。

SPACとあざれあ図書室との企画展示です。

2月11日(土祝)~3月12日(日)まで静岡芸術劇場でイプセンの名作『人形の家』が上演されます。

この上演に合わせ、あざれあ図書室では、『人形の家』から考える〈女性と自由〉と題して関連本を展示します。

詳細はこちら

 

静岡県男女共同参画センター あざれあ

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