男女共同参画WEBマガジン

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自分らしく生きるためのヒントを見つける旅にでよう

インタビュー2016

この人に聞く!

アサディ みわさん

(静岡ムスリム協会事務局長)

「ムスリムとして生きる」

ムスリムとして生きる

 今から15年ほど前、イスラム教に入信しました。当時アメリカに留学中で、多様な価値観が混在する文化の中、自分らしい生き方を模索していた時出会ったイスラム教徒の友人の生き方、善悪に対する考え方にとても惹かれ、その友人のようにゆるぎない生き方をしたいと思ったこと、その生き方の根幹にあるのがイスラム教だと気づいたことが、入信のきっかけです。イスラム教には、時代の流れに左右されない、人間の普遍的な生き方に対するメッセージがあり、その教えに従って生きたいと思いました。

 

 ムスリムになったことを両親に告げた時、特に反対はされませんでした。入信してから約2年後に現在の夫(モロッコ人)と結婚し、日本に帰国、一時両親と同居していた時期は、礼拝や断食、食事制限など、イスラムの慣習に対する両親の戸惑いが見られ、お互いにストレスを感じた時もありました。現在は別居していますが、ムスリムとしての私たち家族の生き方を全面的に理解、支援してくれています。

 

 欧米の人間観から見ると、イスラムでは女性に対する制約が多々あるとみられていますが、イスラム側から見れば、男女の性差をとても大切に考え、男女を公平に捉えています。

 

 イスラム圏の国々の中でも、風土・文化的要因に従っているためイスラムの教えとは異なる体制もありますし、逆にイスラム圏に、女性に対する教育や社会進出が日本と比べて進んでいると思われる国もあります。

 

 私がイスラム教徒として明言できるのは、イスラム本来の教えでは、女性は決して蔑視されていなく、むしろ気高い地位と尊厳を持って大事にされています。

 

“対話”を通して“違い”を理解する

 イスラム教徒が日本で暮らすことに、今のところ大きな問題はないと感じています。日本で、イスラム教徒だからという理由でひどい迫害を受けたり、ヘイトクライム(異教徒・異民族への憎悪や、人種間対立に起因する犯罪)の対象となったりという事件はありません。非イスラム圏の国々の中でも、日本はムスリムにとって暮らしやすい国ではないでしょうか。それは、日本には宗教に対して寛容な土壌があることを示しているといえます。

 

 とはいえ、宗教上の戒律を守りながら日本社会で問題なく暮らすムスリムがいても、日本人とは違う“異文化性”から日常生活や進学・雇用の機会などで、不当な扱いを受ける場合も少なくありません。

 

 教科書やメディアを通して入ってくる情報には限界があると思います。学校などで生徒にイスラムの文化について話す機会が時々ありますが、生徒たちからは、「なぜヒジャブをするのか」、「どうして断食をするのか」など、いろいろな質問を受けます。そういった“対話”を通して多様性のある社会と直接触れ合うことが、これから子どもたちが社会の中で、自分らしい生き方を見出し、様々な価値観を持つ人々と共生していくためのきっかけとなります。

 

 日本人ムスリムである私は、ある意味“内なる異文化人”として見られており、独特な環境にいるのかもしれません。そのため、いわゆる“日本文化出身でない人たち”が“外人”扱いされたり、心無い言葉に傷つけられたりすることに、胸がとても痛みます。

 

 地域の一員として、あたりまえに共生できる社会になるために対話を重ねていくことこそが、お互いの違いを理解し、尊重し合える社会を形成する上で必要ではないでしょうか。私は、そんな多文化間の橋渡しの一端を担うことができたら嬉しいと思いながら、ムスリムとして暮らしています。

出張イスラム講座を通し異文化理解を促す

ブックサポーター イスラムと女性

あざれあ図書室

『イスラーム世界の

 ジェンダー秩序:「アラブの春」

 以降の女性たちの闘い』

(辻上奈美江∥著

                   明石書店 2014年)

「アラブの春」は女性の位置づけやジェンダーにどのような影響を与えたのでしょうか。異なる経験をすることとなったチュニジア、エジプト、バハレーン、サウディアラビア、モロッコを対象に分析しています。

『国際結婚イスラームの花嫁』

(泉久恵∥著 海象社 2000年)

ある日本人の女性がアフガニスタンの青年と結婚し、柳由美子からシャハネムという名に変わります。アフガニスタンでの暮らしや、サウル革命によりパキスタンを経てニューヨークへ辿り着くまでを綴った1人の女性の物語。

『わたしはマララ:

 教育のために立ち上がり、

   タリバンに撃たれた少女』

(マララ・ユスフザイ∥著

 クリスティーナ・ラム∥著

 学研パブリッシング 2013年)

2012年10月、女の子たちも教育を受けられるように訴え続けたことにより、下校途中のスクールバスの中で銃撃にあったマララ。故郷のスワート渓谷のこと、教育者である父のこと、そして再び声を上げる姿などが描かれた自伝です。

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